発達障がい(LD・AD/HD・自閉症)がある児童・生徒に対する特別支援教育の充実を求める要望書
広島市長 松井一實様
広島市教育委員会教育長 尾形完治様
クローバーの会(発達障害児を持つ親の会) 代 表 村 主 裕 子
要 望 項 目
1. 通級指導教室を全ての小・中学校に設置してください。
「17文科初第1178号」を受け,広島市の通常学級に在籍している発達障がい(AD/HD・
LD・自閉症)のある児童・生徒が,各個人のニーズに適した通級による指導を受けられるよう
に,整備・拡充を行ってください。
通級による指導教室の名称を,現在の通級指導教室(言語障害)は通級指導教室(LD・言語障害),通級指導教室(情緒障害)は通級指導教室(ADHD・自閉症)に変更し、全ての通級指導教室で発達障がい児の受け入れを行っていることを明示してください。
また、平成29年4月から、広島県から広島市に事務権限の委譲が行われるのに伴い、専門的な指導のできる教員を早急に養成し、すべての小中学校に通級指導教室を設置してください。
同時に、幼児対象の通級指導教室を新設してください。
就学時相談時に、保護者に対して通級指導教室を紹介すると同時に、希望があれば見学を認めてください。
見学を認めないという現在の方針を維持されるのであれば、紹介ビデオを作成し、親が必要とす
る情報を保証してください。
2.子どもの多様性を認め、温かく包む学校教育を行ってください。
発達障がいを持つ子どもの多くは、通常学級に在籍し、その数はクラスの3割近く存在すると推
測されます。
最近、クローバーの会において、今まではあまり見られなかったタイプの発達障がいの子どもたちが、登校渋りや不登校になるケースが増えています。
予防的生活指導の名のもとに、給食の食べ方や挨拶から掃除の仕方まで、細かく決まりが設けられるなど行動のマニュアル化が進み、規範性を育て学力向上を図る教育が行われています。
子どもたちは、自由にできるのんびりした時間や環境が失われつつある学校で、息苦しさに耐えながら希薄な人間関係につぶされまいと必死に頑張っています。
特に、本人の意思とは関係なく、じっとしていられない、集中や集団が苦手、その場の雰囲気が読めないなどの特性を持つ発達障がい児は、真っ先に不適合を起こします。
多様性を認め子どもがいろいろな場で活躍できる柔軟な学校教育を行って、発達段階の子どもたちが失敗しても間違っても大丈夫と思える教育を進めてください。
3. 発達障がいのある児童・生徒の不登校対策に優先的に取り組んでくだ
さい。
発達障がい(AD/HD・LD・自閉症)のある児童・生徒の不登校は,不適切な対応や配慮不足による二次障害として起きていることを前提に,特別支援教育の一環として専門的対応をしてください。
現在各中学校区に配置されているスクールカウンセラーは,発達障がいについての専門知識を持った人を任命してください。また,専門性を高める研修等を行ってください。
また、各中学校区にスクールーソシャルワーカーを配置してください。
今後すべての小中学校に、スクールカウンセラーやスクールーソシャルワーカーの配置が計画されていることを鑑み、前倒しで実施され、各校のふれあい広場に位置づけ、ふれあい担当者だけでなく、学校長を始め、担任や各教科担当者が連携を取って児童・生徒を支える体制づくりを進めてください。
「ふれあい教室」は現在の3か所から各区に設置し、発達障がいのある児童・生徒に専門的な対応ができる教諭を配置してください。
また、「ふれあい教室」は明るく開放的な施設に設け、同じ場所に相談部門や引きこもり支援センターなど関連する機関を集め、総合的な対応ができるようにしてください。
各学校で教室に入れないがふれあい広場等に登校できる児童・生徒に対しては,所属の通常教室に入れたり学校行事に参加させたりすることを目的にしないでください。
不登校の子どもの状態が多様であることを考慮し、家庭訪問を義務付けたり、無理に子どもと面会したりすることのないよう、教育委員会は学校に対して報告を求めないでください。
4.発達障がい児への特別支援が当たり前の学校にしてください。
発達障がいという言葉が広く知られてきているにもかかわらず、最近、学校間の対応のバラつきが大きくなっています。
特別支援教育とは名ばかりに、わが子の発達障がいの特性の理解と手立てをもとめて学校に出向く保護者に、特別対応はできないと話を聞こうとしない風潮が見られます。
発達障がいを持つ子どもは、特別な配慮をしてもらって初めて、障害のない子と同じスタートラインに立てることを、全教職員が理解するための研修をしっかり行うとともに、保護者の相談窓口を複数設けてきめ細かい対応をしてください。
個々の発達障がい児について、専門家のアドバイスの基に、校内委員会でどのような支援をするかについて具体的な指導計画を立て、全教職員、保護者、関係者がその内容を共有できるようにしてください。
巡回相談員だけでなく、子ども療育センターの保育士や広島大学にこにこルーム心理士など、該当児の関係者との連携を、校長判断で必要な回数だけ何回でも(最低でも月1回)行えることを周知徹底してください。
特に定期テスト時や学力テストに、発達障がいを持つ子どもが本来の能力を発揮できるよう、個別の対応(書字や読字困難な生徒への時間延長、書字困難な生徒に対してキーボードの使用、読字困難な生徒に音声読み上げ、音韻認識や聴覚的情報記憶が困難な生徒には聴覚障害と同様の代替措置、聴覚過敏のある生徒の別室試験、空間認知や視知覚に困難がある生徒には問題と解答を同一用紙に)を義務付けてください。
また、学校からの要請とは別に、発達障がいのある児童・生徒の発見を目的とした専門家による巡回指導を実施してください。
5. 公立高校入試の特別措置と中学校の定期テストにおける配慮と,
特別支援学級在籍の児童や生徒の内申書作成の周知徹底を図ってください。
公立高校入学試験の際に,発達障がい(AD/HD・LD・自閉症)のある生徒も特別措置ができること,また,特別支援学級在籍の児童や生徒に対して通常学級と同じ内申書の作成ができることについて,全ての小中高等学校の教職員全員と保護者に周知徹底させるための措置(全教職員対象の研修伝達や、入学式等での保護者への説明や市民広報や学校便り等の活用)を行ってください。
同様に,中学校や高等学校の定期テストにおいても同じ措置ができることを各中学校の教職員全員と全保護者に周知徹底してください。
各学校がスムーズに取り組めるよう,全国で実施されている配慮の事例などについての研修会を実施してください。
6. 行政による就学時相談を改善してください。
相談員は,発達障がいについて専門知識を持っている人を任命してください。
WISC―ⅣやDN―CASなどの特性をみる検査を行い,保護者への説明時には、今後の就学時相談の取り組みの全容を示し,検査結果のデータをきちんと渡して説明してください。
また,発達障がいの状態を正確に把握したうえで就学判断を行い,保護者の願いや不安に丁寧に答えながら協議を進める相談活動をしてください。その中で,保育園・幼稚園の先生,相談員,保護者が一堂に会して話をする場を設けてください。
「通級による指導」について,保護者に周知徹底してください。
7. 発達障がい児・者のライフサイクルに関係する部署の連携し、総合的
なビジョンを示してください。
市教育委員会は,子ども未来局や健康福祉局等,発達障がいを扱う関係部局と連携を取ってください。
その為の,組織を作り,発達障害者支援法をどのように具体化するのか,ビジョンを具体的に明らかにしてください。
特に,市教育委員会は,広島市に在住する発達障がいのある幼児・児童・生徒の保育・教育を行うために,施設・設備の新増設や,マンパワーの養成などの具体的な中長期計画を作成し,実施してください。
・発達障がいのある子どもたちに対する多様な教育形態(20人学級,リソースルーム,通級
による指導,TTによる授業など)
・不登校対策と発達障がいのある生徒を対象に,ゆったりした教育過程を持つ中高一貫校の新設
・学校になじめない発達障がいを持つ子どものための教育(訪問指導,衛星授業,DVD等の貸し出しなど)
・高等養護学校の新設と発達障がい児コースの設置